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web3を活用した新時代のロイヤリティプログラムのカギはインターオペラビリティである -Hangを読み解く-

ロイヤリティ・プログラムの次の可能性

日常生活に根ざしているロイヤリティ・プログラム

企業が顧客に対して、自社の商品やサービスに愛着を感じてもらい、LTVを向上させるためのマーケティング・プログラムとして、ロイヤリティ・プログラムはすでに日常に溶け込んでいると言ってもいいと思います。

ロイヤリティ・プログラムでは、ファンは購買やSNSのフォローなどの貢献に応じて特典を付与していくのが一般的です。プレイステーション5、アイドル、スターバックス、マツモトキヨシ、無印良品、いきなりステーキなどエンタメを問わず小売店、美容院なども含め、外を歩けば、ロイヤリティ・プログラムを提供している企業と出会うことになります。

様々なサービスで導入が進んでいるロイヤリティ・プログラムですが、web3技術を活用することでさらなるユーザー体験の向上が期待できます。

例えば、スターバックスのような大手企業はすでにweb3を活用したロイヤリティ・プログラムを試験導入し、顧客への新たな体験を提供しはじめています。しかし、このプログラムは2024年3月に廃止が決まり、多くの企業が最適なweb3ロイヤリティ・プログラムへの活用を模索している段階と言えます。web3を使い、ロイヤリティ・プログラムを作っていくことに関して、Hangという企業が「The Future of Brand Loyalty」にて興味深い解答を提示していましたので、解説をしていきます。

インターオペラビリティとコンポーザビリティ

Hangの主張としては、ロイヤリティ・プログラムにおけるweb3を最大に活かせる点は「インターオペラビリティ(相互運用性)」と「コンポーザビリティ(構成可能性)」にあるとしています。ブロックチェーンという共有・開かれたデータベースを活用することにより、異なるプラットフォーム間のシームレスなデータ連携を実現することができます。

多くの企業がweb3技術やNFTについて、改竄不可能な点や二次流通可能な点に注目していますが、本当の利点はこのシームレスなデータの連携、ポータビリティ性にあると言えます。

この主張は、かなり的を得ていると考えていて、改竄可能性や二次流通可能性がファンやブランド・IPに明確で大きいインパクトを与えるかどうかは定かではありません。

これまでのロイヤリティ・プログラムにおいて、各々のポイントや特典が改竄される可能性はほぼないでしょうし、二次流通についてはそれ自体で大きな金銭的なインパクトを生みません。

その点、インターオペラビリティには大きなインパクトを生む可能性があると言えます。

そして、インターオペラビリティには、縦(Vertical)と横(Horizontal)の2種類があるとHangは説明しています。

縦のインターオペラビリティ

縦のインターオペラビリティは、1つの事業者が持つ複数のチャネルの顧客情報を統合する機能を指します。ファンとの関わり方が多様化した時代では、事業者は様々なチャネルを通してファンと関わっています。

  • SNS

  • Discordやファンクラブなどのオンラインコミュニティ

  • Youtube

  • ECサイト

  • オンラインイベント

  • 実店舗でのグッズの購入

などが現在のファンとの接点を持つチャネルとして考えられるでしょう。これらすべてを統合したシステムを開発するのは、非常に大きなコストがかかる一方で、ブロックチェーンを活用すれば、それぞれの証明トークン/VCの発行などにより、非常に低コストで実装することができます。

この有効性は、アイドルやラジオ局、マルチメディア化が進む漫画などあらゆるエンタメで可能性あるもので、「やりたかったけど、できなかった」ものと言えるでしょう。

実際、私たちのお客様であるラジオ局でも、お笑い芸人のファンの「ライブに申し込んだ回数」、「ラジオについての知識をしっかり持っている」などのオムニチャネルのデータを統合することができています。

横のインターオペラビリティ

横のインターオペラビリティは、事業者間でのファンデータの相互運用です。事業者間コラボレーションによるファンや顧客の共有には非常に大きな効果があります。web3基盤を使わずに実施されたデルタ航空とスターバックスのコラボレーションでは相互に顧客がシェアされ大きな集客効果につながりました。

一方で、事業者間のロイヤリティ・プログラムや連携にはデータベースの統合からUIの調整、契約周り、Biz Devレベルでのオペレーションの協調など非常に実施までに大きなコストがかかり、大企業がしっかりと温めて実施するものだったと言えるでしょう。

web3を活用することの真価は、インターオペラビリティによってこうしたコラボレーションを、大企業だけでなく、近隣の飲食店同士、地域の商店街、インディーのバンドなど誰もが実施できるようになることです。実際、わたしたちもラジオリスナーと下北沢のカレー店を繋げ送客や特典の強化に結びつけることができました。

web3によるインターオペラビリティの導入によって、従来のweb2では実現できないスピードと低コストで、異業種間のコラボレーションやファンの追跡、さらにはファンアイデンティティの持ち出しなど、多彩なアプローチが可能になります。

実際の事例から見る効果

Hangはロイヤリティ・プログラムのアプリなどを開発・コンサルティングすることで実際に大きな成果をあげています。サンフランシスコのミルクティー店「Buba Guys」では、ロイヤリティ・プログラムにより顧客の単価が42%向上しました。また、アメリカで展開するハンバーガー店「Roam Artistan Burgers」では、プログラム参加者の月間訪問回数が8倍に増加し、売り上げが28%も向上したようです。

これらの事例は、web3のインターオペラビリティが実際のビジネスにおいて大きな価値を生んでいることを示しています。しかし、この技術がさらに普及するためには、より多くの事業者がweb3を採用する必要があることも確かです。

課題と可能性: web3の未来とロイヤリティプログラム

web3がもたらすインターオペラビリティとコンポーザビリティは、ロイヤリティ・プログラムの未来を大きく変える可能性を秘めています。一方で、事業者がweb3型のロイヤリティ・プログラムの導入に積極的になるためには、相互運用可能な他の事業者もおこなっている必要があるので「ニワトリが先かタマゴが先か」のようなプラットフォーム問題にも直面します。逆に言えば、web3型のロイヤリティ・プログラムが一定以上登場し、参入メリットが明確になった段階で、爆発的な拡大と普及が期待されます。大きな可能性を秘めた今後のロイヤリティ・プログラムに今後も注目していきましょう。